心配しとったよ

貧乏で毎日の食べる物にも不自由する暮らしでしたが、年取った父親のために一生懸命働いて、少しでも長生きをしてもらおうと思っていました。
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その父親は何よりもお酒が好きでしたが、しかし米を買うお金さえろくにかせげないので、お酒などめったに手に入れる事は出来ません。

それでも息子は父親がお酒を飲むときの幸せそうな様子を思い浮かべると、なんとかしてあげたいと奥山にわけ入って、たきぎを取るのでした。

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そんなある日、若者は岩から足をふみはずして、あっと言う間に谷底へ転がり落ちてしまいました。

気を失ってしばらくすると、のどがかわいて目を覚ましました。「ああ、水が飲みたい」
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体を起こしてあたりを見ると、岩かげから水の音が聞こえてきます。
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「ありがたい。川があるようだ」若者がかけよると、そこには見上げるばかりの滝が、しぶきを立てて流れ落ちていたのです。
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若者は足元に泡立つ水を手にすくって、口にふくみました。「むむっ。これは!」何とそれはただの水ではなく、これまで飲んだ事もないような、かぐわしいお酒だったのです。


「ああ、ありがたい事だ。これを持ち帰れば、おとうがどんなに喜ぶ事か」若者は腰にさげたひょうたんにお酒をくみとると、急いで家に帰りました。
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「遅かったな。お前の身の上に何かあったかと、心配しとったよ」


息子はニコニコしながらうなづくと、ひょうたんのお酒を父親に差し出しました。
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