貧しい男が

昔、昔、一人の貧しい男が、ゴツゴツした荒地をただ同然で手に入れました。とても使えるような所ではありませんでしたので、何とかその土地を踏み固めて一儲けしたいと思っておりました。

ある日のことです。男はこんな看板を立てました。『我はこの世に飽きたので、明日畑で梯子を登って天に行くなり。以上』

次の日のことです。大勢の人が男の畑に集まり、今か今かと男が空に登って行くのを待っていました。畑にはもう人があふれんばかりでした。その真ん中に男がいました。男は挨拶をすると、さっそく梯子の踏み板を登り始めました。

姿がどんどん小さくなってきた時、誰かが叫びました。

「あぶねえ。あぶねえ。降りて来い。」

これを聞くと、男は登るのを止めて梯子を降りはじめました。畑に下り立ち、こう言いました。

「止めてくれてありがとう。実はとても怖かった。天に昇るのは無理じゃ。」

そう言うと、男は家に帰って行きました。

村人たちは「だまされた」とわかりましたが、もう後の祭りです。ゴツゴツした荒地は村人に踏み固められ、立派な平らな土地になりました。めでたし、めでたし。

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