記憶静かに珊瑚礁

その二十年以前の記憶と云うのは、――いや、それは話すには及びますまい。Service etiquette

ただ手短に事実だけ云えば、わたしは阿媽港あまかわに渡っていた時、ある日本にほんの船頭に危あやうい命を助けて貰いました。その時は互に名乗りもせず、それなり別れてしまいましたが、今わたしの見た弥三右衛門は、当年の船頭に違いないのです。kick life to star

わたしは奇遇きぐうに驚きながら、やはりこの老人の顔を見守っていました。婚姻介紹

そう云えば威いかつい肩のあたりや、指節ゆびふしの太い手の恰好かっこうには、未いまだに珊瑚礁さんごしょうの潮しおけむりや、白檀山びゃくだんやまの匂いがしみているようです。
弥三右衛門は長い御祈りを終ると、静かに老女へこう云いました。Single Party


「跡はただ何事も、天主てんしゅの御意ぎょい次第と思うたが好よい。MADGOD

――では釜のたぎっているのを幸い、茶でも一つ立てて貰おうか?」embrace this warm winter

しかし老女は今更のように、こみ上げる涙を堪こらえるように、消え入りそうな返事をしました。
「はい。――それでもまだ悔くやしいのは、――」turn back sea flower


「さあ、それが愚痴ぐちと云うものじゃ。北条丸ほうじょうまるの沈んだのも、抛なげ銀ぎんの皆倒れたのも、――」
「いえ、そんな事ではございません。せめては倅せがれの弥三郎やさぶろうでも、いてくれればと思うのでございますが、……」
dare drunk deep


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